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暴言 ・暴力について

暴言・暴力は、老人福祉施設などで働く介護に携わる者にとって 対処に苦慮する問題の一つです。老人福祉施設に入所する認知症高齢者のう ち約1割が暴力を振るったり暴言を吐いたりするという報告があるくらいですから、暴言・ 暴力の頻度は小さくありません。

介護職と他の高齢者は、認知症高齢者の暴言・暴力により、怪我をしたり、恐怖を感じたり、悲しい思いをします。

暴言・暴力の発生には、施設で生活する中での、人間関係や集団生活 のストレスが関係している場合もあるようですが、それだけでは 多くの発生を説明することはできません。たいていの暴言・暴力の背景に は、認知症そのものがあります。

認知症の高齢者の多くは、普通の生活の中で身の回りに起こるちょっとし た変化の意味を把握することが苦手です。その上、身辺のことが自分の 思ったように出来ないために、イライラしたり自尊心が傷つきやすくなってい る人もいます。こんなことが重なり合って、着替えや入浴、トイレ介助など身辺のお世話をする時に、暴言・暴力が起こりやすくなってくると言われています。

暴言・暴力は、認知症の人が 思いを伝える一つの表現方法であると理解することも大切ですが暴言暴力はちょっとね〜と思う人もいると思いますが避けては通れないと思い直してしばらくお付き合いください。

1、暴言暴力の原因は?

最初に原因を考えてみましょう。知らない人に暴言暴力を振るう訳ですが、第一に考えられるのは、脳の機能低下が暴言暴力の原因だということです。誰でも怒る事はあります。けれども、普通は少々嫌な事があってもその感情を表に出さずに抑えられているのが普通です。

認知症の場合を考えると、脳に障害があるため抑制が難しくなります。また、怒りを感じても、不安や怒りの気持ちを表現できなかったり伝えにくいため、シンプルに暴力や暴言といった行動につながってしまうことが考えられます。

色々な事が理解しにくくなり、不安やいらだちも大きくなっているところに、怒られたりすると、とっさに暴力が出てしまうことは想像できます。

何故怒っているのか客観的にはわからなくても、本人には怒りの原因がわかっています。このような場合、当然不安や怒りの原因を聞き、取り除くことが大切になるのですが、怒りの原因を聞き出せるくらいなら暴言暴力には発展することは少なくなると思います。ということで、怒りの分析をしてみると・・・

①まず考えられるのが、感情のコントロールが難しいと言うことです。

認知症によって脳機能低下→脳の感情抑制部分のコントロール難→感情爆発→暴言、暴力といった行動をとってしまうことがあります。同時に理解力も衰えるので不安や苛立ちを感じやすくなり、感情を上手く表現できず暴言・暴力という場合もあります。また、興奮しているときに大きな声で注意されると恐怖心を感じさらにパニックになってしまうこともあります。暴力的な言動は、本人の性格や意思とは関係なく起こるものです。

②次に考慮するべきは薬の影響です。服用している薬が影響して暴言や暴力が起きる可能性です。

認知症の進行を抑える薬の副作用によって強く症状が出ることや、複数の薬の飲み合わせの悪さが原因で起こることもあります。薬に関して不安に思うことがあれば、自己判断せず必ず医師、看護師に相談してその対処をお願いすることが大事です。

③認知症の種類で〜

ただし、認知症の種類によって暴言や暴力が強く表れることを留意することは薬の投与に大き影響しますから、この点でも医師や看護師に暴言、暴力についてカンファレンスを行うことが大事になってきます、認知症の種類で強く現れるのが前頭葉、側頭葉の萎縮を伴う前頭側頭型認知症だということはよく知られています。

なぜでしょうか?前頭側頭型認知症は、感情表現や理性をコントロールする前頭葉が萎縮するため、穏やかな性格だった人でも急に怒りっぽくなったりします。レビー小体型認知症の場合は、幻視や幻聴の症状が表れやすくそれらを取り払おうとして暴れたり興奮することもあります。

認知症での暴言暴力と理解することはできるでしょうが、そう簡単にね〜許せないとは思います。介護者とて人間ですから認知症という理解の上に立って、それこそ医師、看護師とのカンファレンスが必要になります。

2、暴言、暴力はどんな時に現れるか?

否定され自尊心が傷ついた

被害妄想が見られたときにそれを否定する→自尊心を傷つけられた→怒り→暴言、暴力に!その他にも、長年休まずに仕事に出かけていた方が、毎朝昔と同じように仕事に出ようと→今日は外出危ないと→家族に止められる→行動拒否→自尊心が傷ついた→暴力暴言に!こんなことは、日常茶飯事に起こります。ですから、暴言暴力は意外に認知症の方には多く現れる症状と言ってもいいかもしれません。特に、認知症の種類と噛み合わせた思考が結構大事です。どんな時に起きるのでしょうか?

不安を感じる時!

入浴拒否から暴力に発展することが時々あります。服を脱がされたり、裸になることへの羞恥心や恐怖→入浴拒否→暴れるに発展します! 声かけを工夫することで不安解消を図ることも必要です。

③混乱している時!

混乱しているときに暴言や暴力が表れることがあります。 認知症により理解力低下状態→置かれている状況解らない(例:行き先を途中で忘れる・どこへ向かうか忘れた)→混乱→暴言・暴力に発展

3、対処方法

初めに、暴力や暴言の原因を理解します。本人によく話をきいたり、状況をよく確認し、不安や怒りの原因を探します。本人は介護者を困らせようとしているわけではありません。

A 距離を置く

暴言や暴力はその場で対処せず、少し距離を取り危険行動を確認します。興奮状態では何を言っても余計に興奮させてしまうことも多いからです。少し距離をとってみます。
暴言や暴力に対して強く言い返すや力で対抗するなどは厳禁です身を守るために仕方ない場合もあるかもしれませんが、抑えつける、責めるでは状況は改善されません。

興奮している状態での対応ではさらに状況を悪化させてしまいます。暴言や暴力が始まったときは、少し距離をとり、可能な場合は介護を別の人に代わってもらい冷静になるようにすることが大事です。
物理的な距離だけでなく、心理的な距離も重要です。当たり前ですが、暴言や暴力が認知症の症状であるとわかっていても、介護する側にとっては心身ともに大きな負担です。無理をしすぎて介護者が体調を崩してしまうケースもあり要注意です。

B 関わり方を考える

本人に対する関わり方を考えてみましょう。本人に何かをさせたい時にうまくいかなくても、無理やりさせたり、力で抑えるのは逆効果です。怖かったというイメージができてしまうと暴言暴力→介護拒否となると厄介です。

C 相談

暴力や暴言で悩んでいることを家族や親族、医師、ケアマネジャーなどに相談することが必要です。一人で抱え込まず、周囲のサポートを得ることが暴言暴力には大切です。自身が感じている不安や辛さを吐き出すことで気持ちが楽になります。また、第三者の意見から暴言や暴力の原因が何なのか気付く場合もあります。介護の専門家であれば経験から効果的な対応策や最適なアドバイスをしてくれます。相談することに抵抗がある、話し相手が見つからないなどの場合はノートに記録するだけでもよいです。記録を残しておけば相談するときの資料にもなります。

D 本人の意思を尊重

本人の気持ちに寄り添い、意思を尊重しましょう。本人が望んでやろうとしていることを制止する、嫌がっていることを無理にさせるなどは大きなストレスとなり暴言や暴力の原因になります。また過剰に心配して本人に代わって何でもやってしまうことで自尊心を傷つけてしまうこともあります。本人がどうしたいのかという気持ちを大切にしましょう。

E 他のことに関心を向ける

興奮しているときは、他のことに関心を向ける努力は大事です。カラオケが普段好きなら好きな音楽をかけるとか、かわいがっている孫の写真を見せるなど注意をそらすことで自然と気持ちが落ち着くことがあります。あくまでもことがあるので絶対的な処方箋にはなりませんが試すことには意義があります。いざというときのために、日頃から注意をそらす方法を考えておくことは大事な処方箋の一つになります。

F コミュニケーション方法に工夫を!

置かれている状況、これから何をするのかなど本人が理解できるようにコミュニケーション方法を工夫してわかりやすく説明してあげましょう。
一度伝えたことでも忘れてしまうので頻繁に声をかけてあげましょう。突然体に触れる、介護者がイライラしながら接するなどすると恐怖心や不安を感じ暴力的な態度をとってしまうことがあります。介護するときは感情的にならず、丁寧にわかりやすく話しかけることを心掛けることはかなり大事になります。

4、もう少し深く!

 認知症のケアにおいて、暴言・暴力は常に起こりえることです。経験が少ない介護職は驚き・恐怖を感じてしまいますが、経験を重ねるうちに暴言・暴力に慣 れていき上手く対処出来るようになると思いますが、自分が暴言・暴力を受 けるのは仕方ないと思うようになることではありません。

 認知症のためであ っても、高齢者の暴言・暴力が他の高齢者や現場の介護職に向かうことは 本来あってはならないことは根本に持っておくことが必要です。しかし暴言・暴力の問題は、ケアを尽くして も、完全には防ぎきれないところに、この問題の難しさがあります。
もちろん、認知症が原因でおこる暴言・暴力は、専門医による治療が選択肢です。認知症においては、暴言・暴力が起こりやすいことがわかっており治療法の研究が進んでいま す。薬剤としては、アリセプトや非定型向精神薬や抗てんかん薬は、気分の波を小さくすることで、暴言・暴力の発生を抑 える効果が期待できます。暴言・暴力の中には、せん妄(寝ぼけた状態)が 原因となっている場合もあります。せん妄は、睡眠導入剤などを用いた治 療を行う事で改善が見込まれています。
ただし、薬物療法によっても、暴言・暴力が完全に治りませんが、薬物療法には暴言・暴力の程度を軽く出来る可能性はあります。暴言・暴力の治 療の目的は、当事者の苦痛を改善することだけではなく、他の入所者や介護職の被害を予防・軽減することにあります。

ただし、薬物療法には①体に力が入りにくい②姿勢を維持しにくくなった③転倒する危険が高まる④飲み込みが悪い⑤呂律がまわらなくなる⑥失禁する⑦日中眠りがち⑧昼夜の区別がつかなくなるなどの副作用があります。薬の量の調整は、副作用と主作用とのバランスをとりながら行われますが、副作用が出現したらその情報を医師 に伝えること、医師、看護師との常日頃のコミニュケーションを大事することが大切です。

5、暴言・暴力の対処
①介護職や他の入所者の安全を確保!
高齢者による暴言・暴力が生じる時、最も大切で最初に行わなければならないのは。暴言・暴力を向 けられたスタッフや、他の入所者の安全を確保です。
②安全確保!
暴言・暴力があなたに向けられた時は、距離感を保つように!暴力の場合、物理的距離感が大切です。一定の距離を保っていれば、小さ な暴力からうまく逃れることができる場合も多いと言われています。
その場から逃げる時には、気持ちを落ち着け、できる限り静かに行動する ことが大切です。暴力に対するあなたの声や動きが、高齢者を刺激し興奮 を引き起こし、さらなる暴力に繋がってしまう可能性があるので要注意です。

③暴言には精神的距離の確保!                        あなたに暴言だけが向けられている時は精神的な距離感が大切です。静かに対処する事が大切なのは暴力と同じです。

④他スタッフの助け!
一人では対処しきれない暴言・暴力には、他のスタッフの助けを求めまし ょう。
高齢者の暴言・暴力が他の入所者に向けられた時には、暴力を振るった 人と、他の入所者を引き離しましょう。

⑤本人に原因を聞く!
原因はなんだろう? どうしたんですか?
暴言・暴力の理由を探る一つの方法は、「どうしたんですか」とお年寄り自 身にたずねてみることです。暴言・暴力があなたに向けられた後、安全が 確保されれば、落ち着いてたずねてやすくなるでしょう。お年寄りは答えてく れないときには、あなた自身で原因を探りましょう。同僚の経験にヒントがあ る場合もあります。
どうしたんですか?とまずは聞こう!

⑥冷静な口調で改めてほしい点を伝える
 高齢者から暴力を受けない距離をとり、あなたの気持ちが落ち着いたら、 暴力を振るった人に改めて欲しい点を伝えよう。自分も怒っちゃダメですよ!

次のように言ってみましょう!
叩かれたり、引っ掻かれた場合: 「痛いので止めて下さい」 オムツや汚物を体につけられた場合: 「汚いので止めて下さい」痛いので止めて下さい どうしたんですか?
高齢者が暴力を起こした時に、その問題点を高齢者に伝えることは、大切なことです。認知症のために、しばらくするとあなたが伝えたことを忘れてしまう人でも、暴力を起こしたその時、その時に、その人の中に保たれてい る脳の健康な部分に向かい合うことは、その人の人権を尊重することです。

⑦暴力を受けたことを他のスタッフに伝える!
暴力を受けたら、フロアの上司に伝え、同僚と体験と情報を共有する。上司に伝える際には、誰から、どういう状況で、どういう暴力を受けたの か?ケガの程度など、具体的に伝えることが大切です。紙面やコンピュータに打ち込んで記録しておくことが大事です。
⑧体験と情報の共有
出血や内出血、骨折、抜毛などなど何が起こったか?家族に事実を伝えます。暴力を振るう方も振われる方にも事実を伝えます。もちろん上司を通してです。

⑨上司により、暴言・暴力が認知症に起因するもので、ケアの工夫だけでは 対処しきれない、という判断が下されたら精神科への受診に結びつけるように医師との話し合いをすることを忘れないように!

今回は、暴言暴力に関するものを総論的に書いてみました。