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徘徊

1、徘徊と介護者 

認知症の症状の一つである徘徊は、近所の人や警察を巻き込む可能性があるため、介護する側にとって大きなストレスです。徘徊は認知症の周辺症状と呼ばれる症状の一つで、家の中だけでなく外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る行動のことです。本人に悪気がないことは理解しても、なかなか意思疎通が図れません。正しい対処法がわからずに一人でなんとかしようとすると、介護疲れに陥ったり、ひどいときはうつ病を発症したりします。

 こうした事態を防ぐためには、徘徊についての理解を深め、正しい対応を身に付けることが大事です。徘徊している認知症患者は、はたから見ると意味もなくうろついているように見えるかもしれません。しかし、何かしらの原因やきっかけがあり、本人なりの目的があっての行動だといわれています。

2 、徘徊はなぜ起こる?

徘徊はなぜ起こるのでしょうか?原因としてまず考えられるのが「記憶障害」と「見当識障害」です。
 
A記憶障害とは?
記憶障害とは、記憶をすっかりなくすことです。誰にでも、一時的な物忘れや突然物事を思い出せないことはありますが、何かのきっかけでそれらの記憶は戻ってきます。一方、認知症の記憶障害は、経験したこと自体を忘れてしまいます。ヒントやきっかけを与えても記憶が戻ってくることはありません。例えれば、昨日食べた夕飯のメニューを思い出せないのが普通の物忘れで、夕飯を食べたこと自体を忘れるのが認知症の記憶障害です。
 
B、見当識障害とは?
見当識とは、周囲の人や状況、時間、場所などを認識する機能のことで、この機能に障害が生じるのが、見当識障害です。自分が今いる場所はどこなのか、今日は何月何日なのか、目の前にいる人はだれなのかといったことがわからなくなります。
 
記憶障害や見当識障害を原因とした徘徊の事例としては、“トイレに行こうとしたものの、トイレの場所がわからなくなり、うろうろする。”“財布を探し始めたが、財布を探していることを忘れてひたすら歩き回る。”といったことが起こります。
 
C、不安やストレス
引っ越しで周辺環境が変化したり、慣れない場所に連れていかれたりすることで感じた大きな不安やストレスが、徘徊の引き金になることがあります。具体的例で言えば、引っ越し後の新しい家や環境になじめず、前の家に戻ろうとする。家の人に叱られたことが恐怖の記憶として残り、その場所から逃れようとする。家族が留守にしたときに独りぼっちであることに不安を覚えうろつくなど 認知症で不安やストレスがかかると徘徊は起こることがあります。
 
D、前頭側頭型認知症
徘徊は前頭葉や側頭葉が萎縮することで生じる前頭側頭型認知症が原因になることもあります。この症状には、どんな状況でも同じ行動を繰り返すという特徴があります。決まった時間になると家の中をぐるりと1周するなどが該当します。
 
一般に、行動するパターンがわかっているので大きな危険がないように見えますが、事故や転倒はいつでも起こり得るため注意が必要です。

3、徘徊の危険性
徘徊には、事故やケガなど、さまざまな危険が伴います。例えば行方不明です。認知症の人は、外に出てうろうろしているうちに、自分の居場所や帰り道がわからなくなりどこに行ったか?わからないと言うことが起こります。テレビでそいう人を探す番組があったりしますが、みていると徘徊からの行方不明と感じることが多々あります
誰かに保護してもらえなければ、衰弱して命が危険にさらされるだけでなく、交通事故に巻き込まれるおそれもあります。その他、転倒によるケガや夏場の脱水症状と熱中症、冬場の低体温症といったさまざまな危険が考えられます。転倒や熱中症は、家の中での徘徊でも起こりえるので、特に注意が必要です。
 また、心身にかかる負担で介護者側が倒れてしまうこともあります。徘徊は、被介護者だけでなく介護者の体調にも影響を及ぼす症状といえるでしょう。

4、徘徊の対処

認知症高齢者本人に降りかかるリスクと、介護者の負担を小さくするには、徘徊への適切な対応が大切です。では、どのように対応すればいいのでしょうか?まずは、怒らないなかなか難しいことですが、「怒らないこと」が大きなポイントです。
 怒られた内容は忘れてしまっても、そのときに感じた恐怖や嫌な気持ちは残るといわれています。それによって「ここにいると嫌な思いをする」「ここは自分が気持ち良く過ごせる場所ではない」という認識につながり、安らげる場所を求めてさらに徘徊を続けるおそれがあります。何度も徘徊を繰り返されると、つい「いい加減にして!」と声を荒らげたくなるでしょうが、かえって逆効果になると言われています。
 次に考えることは理由を聞くことです。なぜ徘徊をするのか?その理由を問いかけ、耳を傾けることも大切です。周囲の人にはわからなくても、本人なりに徘徊する理由があります。尋ねたところで明確な答えが返ってくるとは限りませんが、会話の中にヒントとなる言葉が隠されているかもしれません。
 
行き先を尋ねて「自分の家へ帰る」と答えるようであれば、背後に、今住んでいる環境への不安やストレスが隠れている可能性があります。「家に泥棒がいる」と答えたなら、妄想の症状が出ていると考えられます。
 
本人の気持ちがわかれば、原因を取り除いてあげることができます。たとえ明確な理由がわからなくても、気持ちに共感して寄り添ってあげましょう。本人の不安が軽くなれば、症状が改善される見込みは大いにあります。他のことに気をそらすことも大事です。徘徊が始まりそうだと感じたり、徘徊している場面に遭遇したりしたら、やめさせようとするのではなく、他のことに気をそらす大事です。
 
例えば、「家に帰る」と言って外に出ようとしたときには「帰る前にトイレに行っておきましょうか」と声をかけてトイレに誘導したり、お茶を用意して「せっかくですからお茶を一杯どうぞ」と誘ったりしてみてください。他のことに気がそれているうちに、どこかへ行こうとしていたこと自体を忘れてしまえば、そのときはもう徘徊することはなくなります。

5、具体的な予防策と解決策

A日中に適度な運動をする
無理は禁物ですが、日中に適度な運動をさせると効果的です。ラジオ体操や高齢者向けの軽いストレッチなどで十分です。体を動かすことは脳に良い刺激を与えるだけでなく、程よく体を疲れさせることで夜ぐっすり眠れるようになり、深夜の徘徊予防につながります。かつて日常的に手がけていたことをお願いするのも効果的です。誰かの役に立つことは自分が必要とされているという認識につながり、自分の居場所がないという不安が小さくなります。
 
Bそのまま歩かせてあげる
徘徊が始まったとき、状況が許すようであれば歩きたい理由を聞き出して気持ちを受け止め、そのまま歩かせてあげる方法もあります。本人がやりたいように行動できると気持ちも落ち着いてきます。ただし、外に出る場合は、事故や迷子の心配があるので、必ず誰かが付き添います。家の中でも、転倒したりしないように、見守ることを忘れないようにしましょう。
 
Cデイサービスなどを利用する
症状が悪化し、家で面倒を見ることが難しい場合は、デイサービスを利用します。介護に慣れたプロが対応してくれるので安心な上、レクリエーションを通して体を動かしたり、施設の周りを職員と一緒に散歩したりすれば、自宅では落ち着いて過ごせるようになる場合もあります

以上の三点が具体的な予防策になります。さてさて、徘徊は大変だと言うことを認識してお付き合いをしましょう。